熊本家庭裁判所人吉支部 昭和50年(家)19号 審判 1975年2月21日
申立人 高野トシ子(仮名)
事件本人 岩崎俊文(仮名)
昭四一・一〇・二一生
主文
本件申立を却下する。
理由
本件資料および事実調査の結果によれば、次の事実が認められる。すなわち、申立人と岩崎義明とは昭和四一年一月四日婚姻し、同年一〇月二一日に事件本人が長男として、昭和四三年一月三一日に長女則子がそれぞれ出生したが、昭和四五年九月二一日事件本人の親権者を父義明、長女の親権者を母である申立人と定めて調停離婚した。義明は同人の父岩崎喜八郎、母トメと同居して会社に勤めるかたわら農業(田畑約六反、牛五頭)をしていたが、昭和四九年一一月二七日脳卒中で死亡し、その後は祖父喜八郎、祖母トメが事件本人を養育している。祖父母ともに元気で前記農業を営み、年収一〇五万円くらいになり、そのほか祖母は鑵詰製造販売業を営む商店の店員として勤務し、日給二、〇〇〇円くらいを得ている。一方申立人は離婚後一たんは再婚したものの、間もなく昭和四九年三月二四日離婚し、現在は現住所の借家に前記光子と二人で生活をし、兄の経営する木工所に勤務し、月収約五万円を得、ほかに児童福祉手当として四か月で九、八〇〇円を受給している。そして、前記のとおり義明の死亡により事件本人の後見が開始したため、祖父喜八郎から当裁判所に後見人選任申立がなされ、その候補者として右喜八郎を指定するよう求めている。以上の事実が認められる。以上の事実からすれば、申立人よりも祖父母の方がその経済的生活面においてより安定していることがうかがわれ、事件本人もこれまで祖父母と同居して生活を共にして親しんできたこと、祖父母も事件本人の養育について強い熱意を示していることなどの事情を考慮すれば、事件本人の監護養育はむしろ祖父母に委ねるのが相当であると考えられるので、右喜八郎を後見人に選任することとし、本件申立はこれを却下することとする。
(家事審判官 綱脇和久)